私が郷土料理に取り組む理由

養生ふうどでは、郷土料理をテーマに「のこす」「つくる」「伝える」活動をしています。イベントや教室を開催していると「どうして郷土料理に取り組もうと思ったのですか?」と質問されることがあります。

そこで今回は、私が郷土料理に取り組む理由について、自己紹介を交えながらお伝えします。

〇この記事を書いた人…薬膳と郷土料理の研究家:松橋かなこ

郷土料理と食養生に助けられてきた子ども時代

私は幼少期は体が弱く、冬になると体調を崩して入院するようなタイプでした。そんな私を心配して、富山県出身の母は、薬草文化が根付く富山の郷土料理やおばあちゃんの知恵をもとに、いろいろなお手当をしてくれました。

たとえば「血の巡りが悪いときには酢ずき(※)」「のどが痛いときには大根はちみつ」「春先にはよもぎを食べるといい」など。こうした体験から、こうした食の知恵は、心身をやさしく癒してくれると幼い頃から感じていました。

また、父親が転勤のある仕事をしていたため、私は神奈川県で生まれた後、小中学校の4年間を鹿児島県で過ごしました。子どもにとって、住み慣れた環境を離れるのは心理面での負担がとても大きいこと。

寂しさを感じると郷土料理を作り、懐かしい想い出に浸って元気を取り戻すこともありました。

※酢ずき(すずき)…ずいきと呼ばれる里芋の茎を酢に漬けた料理。

旅や仕事を通して郷土料理の大切さを再確認

大学では建築学科でまちづくりを学び、卒業後は企業とNPOでまちづくりの仕事に10年以上携わりました。

その間に約1年の休暇を取って、バックパッカーとして世界35ヵ国を訪問。海外でさまざまな文化に触れるうちに「日本らしさって何だろう」「日本人としてのアイデンティティーとは」と考えることも多くなりました。

帰国してから、日本文化への関心はさらに高まりました。仕事やプライベートでいろいろな場所を訪れるなかで「日本の郷土料理って面白い」「地域によって個性豊かだなぁ」と感じることも。

郷土料理の魅力や大切さを強く意識するようになったのは、ちょうどこの頃です。

衰退していく現状を「何とかしたい」

いろいろなご縁とタイミングが重なって、風土とfood(食べ物)を掛け合わせた活動として2014年に「養生ふうど」を設立。初期の頃は、薬膳とおばあちゃんの知恵をベースにした「養生ごはん教室」を開催していました。

その後、日本文化の入り口マガジン「和樂web」(運営:小学館)をはじめ各種webメディアのライターを務めるようになり、郷土料理や伝統食の作り手の方々に取材する機会にも恵まれました。

さまざまな人にお話を伺うなかで、作り手の方々に共通していたのは「日本の食の素晴らしさをもっと多くの人に知ってほしい」という想いを持っているということ。それと同時に、郷土料理や地域固有の食文化が失われつつある現状に直面することもありました。

郷土料理には日本に根付く大切な食文化が詰まっていて、私にとっては子どもの頃から助けられてきた大切な存在です。「この現状を何とかしたい」と思い、郷土料理をテーマにした活動が始まりました。


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