郷土料理をまもり広めていく意味とは

養生ふうどでは、郷土料理を「まもる」「つくる」「広める」活動をしています。では、郷土料理をまもり広めていく意味は、どんなところにあるのでしょうか。今回は、2015年に制作した郷土料理に関する小冊子の実績をもとに、一緒に考えてみたいと思います。

〇この記事を書いた人…薬膳と郷土料理の研究家:松橋かなこ

小冊子「シンプル風土食ノート」とは

2015年11月に「豊田市足助町で見つけたシンプル風土食ノート(以下、風土食ノート)」を発行しました。これは、地元の人たちから現地で愛されている料理を教えてもらい、レシピを制作して小冊子にまとめたものです。取材から執筆、編集、印刷までを担当しました。養生ふうどで企画・制作を行い、平成27年度あいちモリコロ基金の助成を受けて作成したものです。

この冊子に掲載している料理は、「サバ味噌だれ」「こも豆腐」「こんにゃくの白和え」「手づくりきなこ」「子芋の醤油煮」「大根の梅酢漬け」の6種類。初心者でも作りやすい料理を中心に選び、料理にまつわるエピソードやレシピを日本語と英語で紹介しています。

たとえば、サバ味噌だれは、かつて砂糖が貴重だった時代に、五平餅に使われていたもの。現在は甘辛い味噌を使うことが多いですが、サバ味噌だれの「しょっぱい味」には一味違った味わいがあります。

郷土料理の「聞き書き」から得られるもの

風土食ノートは、「聞き書き」により制作しました。聞き書きとは、人の話を聞いてその内容を書き留めるということ。

世界中のいろんな情報が簡単に入手できる現代において、アナログな方法のように感じるかもしれません。しかし、聞き書きという現地の人との交流によって得られるものも、たくさんあります。

たとえば、サバの味噌だれを一緒に作りながら「昔はいろりを囲んで食べていた」「お祭りのときのごちそうだった」などのエピソードを教えてもらえたことも、聞き書きだからこその「収穫」のひとつです。

郷土料理は、その地域の風土や食文化と深く関わっています。レシピだけで料理の味が再現できるかといえば、それは極めて難しいのではないでしょうか。郷土料理にまつわるいろんな話を聞くことで、その味わいがより一層深まるのではと感じています。

郷土料理をまもり伝えていく意味とは?

郷土料理には、地産地消やフードロスにつながるといった「人や環境にやさしい」という魅力があります。では、郷土料理をまもり伝えていくことには、どんな意味があるのでしょう。

風土食ノートを印刷した後、いろいろな人に冊子を手渡したり、カフェや書店などに配架したりしました。読者からは「料理を手作りしたらとびきりおいしかった」といった声が数多くあり、こうした昔ながらの素朴な料理には人の心を癒して元気にする力があるように感じました。

また、料理の作り手からは「自分たちが作り続けてきた料理がこんなふうに掲載されて嬉しい」という声が届きました。郷土料理が衰退しつつある背景には、食べる側だけでなく、作る側の変化も大きいと感じています。この経験から、作り手の方々が「自分たちが作ってきた料理に自信を持つ」ということは、実はとても大切なことなのではと考えるようになりました。

読者のなかには「足助町に行ってみたくなった」という人も。郷土料理は、地域の壁を超えて人と人がつながるきっかけになるーー。郷土料理の持つ可能性はまだまだ広がっているようです。

★養生ふうどでは、レシピの聞き書きや小冊子制作の支援をしています。ご相談・ご依頼 は、お問合せフォームからお気軽にご連絡ください。


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