干し野菜の聖地!? 長野・鬼無里村でスローフードを体験
先日、干し野菜の聖地を訪ねて長野の鬼無里(きなさ)村へ行ってきました。干し野菜というのは、文字通り野菜を干したもののこと。古くて新しい食の知恵として、少し前から注目を浴びています。
私は干し野菜が大好きで、念願かなって訪問することができました。今回は、鬼無里で干し野菜づくりが盛んな理由とともに、現地で体験した干し野菜料理について綴ってみたいと思います。
長野・鬼無里村で干し野菜づくりが盛んな理由3つ
干し野菜は、全国各地で作ることができます。では、鬼無里村で干し野菜づくりが盛んに行われているのは、どうしてなのでしょうか。その理由は、大きく3つあります。
干し野菜に適した気候条件
長野県は日本の中央に位置し、全体の面積に対して山岳地帯が多い県です。特徴は、夏は日照時間が長く、湿度が比較的低いということ。こうした気候条件は野菜を干すのに適しています。
農業が盛んで野菜がたくさん収穫できる
長野県は農業が盛んな地域です。たくさん収穫できた野菜を無駄なく食べる知恵として、干し野菜づくりが発達したといわれています。
冬の保存食として利用されてきた
鬼無里は山間部に位置していて、雪の多い地域として知られています。冬の間は野菜が収穫できません。さらに、昔は輸送手段がなかったので、食料を貯蔵する必要がありました。こうした状況のなかで干し野菜が利用され、食文化として根付いてきました。
干し野菜とは|寒干し大根やりんごなど多種多様!
干し野菜は、新鮮な野菜を水分を抜いて、乾燥させた食材のこと。昔ながらの太陽光や風によって自然乾燥させる方法だけでなく、最近は特殊な機械を使用して乾燥させることもあります。
干し野菜と聞くと「切干大根」をイメージする人が多いかもしれませんが、鬼無里村ではさまざまな種類の野菜を干しています。
左から時計周りに、かぼちゃ、りんご、寒干し大根。かぼちゃは切って加熱したものを、干しています。干し野菜の種類によっても異なりますが、一般的に8~9割の水分が抜けているので長期保存が可能です。
こちらは、鬼無里村での寒干し大根を作る様子。寒干し大根は、冬の寒さを利用して作る干し大根のこと。長野県だけでなく、ほかの地域でも作られています。
大根を一昔前までは、どこの家庭でもこうした風景が見られたのだとか。最近は、山の動物たちが民家にやって来て大根を食べてしまうことから、寒干し大根を作る過程が少なくなっているようです。
素そばな亭で干し野菜料理を堪能
干し野菜づくりが盛んな鬼無里村ですが、実は、干し野菜料理を食べられる店というのは非常に少ないです。せっかく現地に来たので「地元の人が作る干し野菜料理を食べてみたい」ということで、今回は農家レストラン「素そばな亭」さんへ。笑顔のすてきな女性が切り盛りする、アットホームなお店です。
(情報は2023年5月のものです。お店に許可を得て掲載しています。)
最初に口にしたのは、寒干し大根や干し椎茸、にんじん、こんにゃくなどが入った煮物。大根に出汁の味がよく染みこんでいて、ほっこりする味わいです。
左は干しナスを炒め煮にしたもの、右はきゅうりを少しだけ干して味付けした漬物。どちらも塩加減がちょうど良く、絶妙な味わいです。
信州といえば、そば。店名にも「そば」という文字がある通り、手打ちのそばは香りが良くて滋味深い味わいでした。
そして最後にいただいたのは、りんごチップス。長野はりんごの栽培が盛んな場所。りんごの甘味と酸味のバランスがよく、つい「もうひとつ」と手が伸びるおいしさでした。
太陽の恵みで食材の味が引き出される
食材を干すことで、野菜や果物が持つ甘味が凝縮されます。ゆっくりと噛んでいるうちに、素朴な甘さが口いっぱいに広がっていきます。素材ごとに、どんな干し方がいいのかも少しずつ異なります。また、干す前に「蒸すのか」「蒸さないのか」という判断も必要です。
鬼無里村では一年中干し野菜を作っています。春は山菜、夏はナスなどの夏野菜、秋は南瓜や野沢菜、冬は大根ーー。私が訪れたときには、干した山菜もよく見かけました。
先人の知恵・干し野菜をもっと身近に
干し野菜は保存食であり、たくさん収穫した野菜を無駄なく食べる生活の知恵です。太陽のパワーを借りてひと手間かけることで、食材が滋味深いものに変わっていきます。
今回鬼無里村を訪れて、風土によって育まれた独自の食文化を体験することができました。そして、干し野菜の滋味あふれるおいしさを体験したことで、「故郷の味や食文化を伝えていきたいな」という想いをあらためて感じています。
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