郷土料理とは?世界一周旅行から「6つの視点」で考える(世界の郷土料理:はじめに)

生まれ育ったふるさとを離れて初めて、その土地ならではの料理の価値に気づいたーー。そんな経験はありませんか。

私は11ヵ月の世界一周旅行に出かけたときに、日本の料理や食文化の素晴らしさに気が付きました。それと同時に、世界各地のローカルフードに触れて、郷土料理の面白さを感じました。

そこでシリーズ企画「世界の郷土料理」として、世界の事例を交えながら、郷土料理の奥深い魅力について考えてみたいと思います。

〇この記事を書いた人…薬膳と郷土料理の研究家 松橋かなこ

郷土料理を考えるための「6つの視点」

郷土料理について考える時、私は6つの視点を大切にしています。1~3は人、4~6は自然や環境に主軸を置いています。1→3、4→6のように数が大きくなるにつれて、それぞれが広がっていくイメージです。

もちろん、実際の郷土料理では、それぞれの視点が複合的に絡んでいます。また「人間は自然の一部」という薬膳の考え方にもあるように、人と自然は本来は切り離せないものです。

  1. 人々の手から生まれる
  2. 地域ごとに伝承される
  3. コミュニティや文化をつくる
  4. 自然環境や気候から生まれる
  5. 季節の移ろいにより育まれる
  6. 風景を創出する

これらの視点は、いずれも2007~2008年の世界一周旅行にて、35カ国を訪問した際の実体験と深く結びついています。また、2014年からスタートした自身の活動(養生ふうど)のなかで重視している視点でもあります。

そこで、新しいシリーズ企画として、世界一周旅行での体験とふうどの活動を紹介しながら、郷土料理の視点を一つひとつ解説していきたいと思います。

※風土(ふうど)とは?

Oxford Languagesによれば、風土とは「その土地の気候・地質・景観などに見られる(住民の生活や文化に深く働きかけるものとしての)環境」と定義されています。

また、書籍『風土ー人間学的考察(著者:和辻哲郎、出版社:岩波文庫)』では、風土とは「単なる自然環境ではなくして人間の精神構造の中に刻み込まれた自己了解の仕方に他ならない」と説明されています(「BOOK」データベースより引用)。

記憶を整理し、仲間と共有していく

創造とは、記憶であるー。これは、映画監督の黒澤明さんが残した有名な言葉のひとつです。何かを作ろうという時に、自分が見たものや経験したものでしか創造できないということ。

自分自身の活動を考える時、「記憶」という言葉がとてもしっくりくるなぁと感じます。

というのも、2014年に活動をスタートしてから、薬膳やおばあちゃんの知恵をテーマにしながら、さまざまなチャレンジをしてきました。

最近になって気が付いたのは、何か新しい企画を考える時に、この「記憶」を頼りにしているケースが多いということ。

同時に、世界中のさまざまな情報が簡単に手に入る現代において、そこで得られた情報は「記憶」といえるのか、という疑問がふつふつと湧いてきました。

ちなみに私自身は、実際の体験を通して感じたものが貴重な「記憶」として残っていくのではないか、と考えています。

もちろん、こうした意味での記憶を蓄積するには、膨大な時間とエネルギーがかかります。危険やリスクを伴う場合もあります。何しろ、とても地道なアプローチです(笑)。

振り返ってみると、いろんな人たちの理解や協力があったからこそ実現できた世界一周旅行やふうどの活動の数々。自身のなかの記憶を、見える形として文章に書き留めて、同じような想いや関心を持つ人たちと共有したい。

そんな想いから、シリーズ企画「世界の郷土料理」として、これから少しずつ綴ってみたいと思います。郷土料理について、ぜひ一緒に考えてみませんか。

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